“夫の平熱は36度でも不倫熱は39度”体温計が記録した裏切りの夜

「平熱36度、でも“心の温度”は39度──体温計が暴いた裏切りの夜。」

“夫の平熱は36度でも不倫熱は39度”体温計が記録した裏切りの夜

「36.2℃、36.5℃、36.8℃……」

いつもの夫の平熱は、そのあたり。ところが、あの夜だけは違った。体温計の先端がピピッと鳴って、表示は39.0℃。

「ごめん、熱があるみたい。今日は先に寝るね」──そう言って、夫は布団にもぐり、私の視線からスマホをするりと隠した。

頭のどこかで、別の数字が点滅していた。“発熱”じゃなくて、“不倫熱”。胸の奥で、そんな言葉が勝手に生まれる夜だった。😔

🌙 変わり始めたのは、数字より先に“空気”だった

夫の変化は小さな粒のように、日常のすき間に落ちていた。

・残業が増えたのに、忙しい人の疲れた匂いがしない。

・LINEの通知音が“消音”になり、画面は常に伏せられたまま。

・新しい柔軟剤の香り。私の知らないブランド。

・「明日は朝イチで外回り」と言いながら、ワイシャツはなぜか週に二回、白から薄いグレーに“気分転換”。

どれも確定じゃない。でも、全部合わせると、私の平熱は少しずつ上がっていくみたいに落ち着かない。

ふと、洗面所で体温計を見つめる。プラスチックの細い棒は、今日も冷たい顔をして沈黙している。

🪞 39.0℃の不自然──体温計より熱かったのは視線

翌朝、夫は「まだ熱っぽい」と言って有給をとった。額に手を当てると、ほんのり温かい。でも39℃の熱の顔じゃない。食欲はあるし、昼には配達アプリで大盛りパスタを頼み、映画を観ながら笑っていた。

私は洗濯カゴからワイシャツを取り出して、ポケットを軽く叩いた。コツン、と小さな音。中から出てきたのは、見知らぬカフェのレシート。日付は昨日、時刻は“残業”と聞いていた時間帯。

「ねえ、このお店いつ行ったの？」と聞く勇気は、そこで折れた。私の中の39℃は、まだ測れていない。

📞 相談──誰かに話すだけで、数字は言葉になる

その夜、私は探偵事務所に電話をした。

「すみません、夫が……体温は高いのに、元気なんです。変ですよね？」自分でも何を言っているのか分からなくなって、涙が出た。

受話器の向こうで、落ち着いた女性の声がした。

「大丈夫ですよ。違和感は“嘘”ではなく、だいたい“影”です。まずはお話を聞かせてください。」

暖かい声に背中を押されるみたいに、私は、柔軟剤の匂いも、消音のスマホも、カフェのレシートも、ぜんぶ言葉にした。

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🕵️ 探偵の視点①──“不倫熱”のセルフチェック表

面談室で、担当の方がメモを取りながら言った。

「発熱の演技に限らず、不倫は習慣の微細なズレに現れます。以下が典型例です。」

❶ スマホの扱いが変わる（消音・伏せ置き・風呂まで持ち込む）

❷ 衣類・香りの趣味が急に変わる（柔軟剤・香水・下着）

❸ 使う言葉が変わる（“外回り”“打ち合わせ”“同僚たちと軽く”）

❹ 予定の説明が増えるのに、具体性は減る（地名・店名が曖昧）

❺ レシートや配車アプリの履歴に“平日夜の繁華街”が増える

「そして、大事なのは積み上げること。一つ一つは小さくても、線でつなぐと立体的に見えてきます」

私はうなずいた。体温計の数字ばかりを見ていたけれど、本当に熱かったのは夫の“もうひとつの生活”だ。

🚙 調査1日目──“有給の午後”は、待ち合わせの午後

経路の把握から始まった。夫は「まだ熱が下がらない」とメッセージを会社に送り、昼過ぎに車で外出。向かったのは職場の反対方向、駅直結のショッピングモール。

監視カメラの死角を読むように、探偵は距離をとって尾行する。エスカレーター下で立ち止まった夫に、黒いワンピースの女性が近づいた。二人は笑い、ほぼ同時にスマホを伏せた。

カフェに入り、窓際の席。二つのカップ、二つのスプーン。テーブルの上に置かれたのは、私の知らない柔らかな手。「発熱の人」が頼むには、少し冷たいレモネード。📸

🌉 調査2日目──“外回り”のルートは、ホテル街の手前で曲がる

この日は、定時後の“残業”。夫は会社を出て、駅の反対側にある古いビルの前で足を止め、電話で笑った。数分後、昨日の女性がタクシーを降りてきた。

二人は腕を組み、ライトの落ちたアーケードを抜けていく。探偵のカメラは一定の呼吸で距離を保ちながら、角を曲がる瞬間を捉える。

その先にあるのは、ラブホテル街の入口。二人が一緒に入る写真、そして二時間後に出てくる写真。画像は時系列の無言の証言になって、封筒の中に重なっていく。

🧾 調査3日目──証拠は“数字”で積み上がる

報告書には、レシートや駐車場の入出庫記録も添えられていた。

・ホテルの利用明細（時間・部屋番号をマスクした控え）

・モール駐車場の滞在時間（“買い物だけ”では説明しづらい長さ）

・配車アプリのルート（“外回り”が繁華街へ向かったことの記録）

数字は正直だ。体温計も、明細も、GPSも。私の違和感は、やっと私以外の声になった。

🧠 探偵の視点②──“発熱”が言い訳に使われやすい理由

「具合が悪い」「今日は早く休む」は、予定をずらす口実として頻出します。

・家族のケアを断りやすい（“そっとしておいて”と言える）

・スマホの返信遅延を正当化できる（“寝ていた”）

・急な外出に理由が付く（“病院へ・薬局へ”）

さらに、体温計の数値は“演出”可能です。温かい飲み物を直後に測る、入浴後に測る、カイロで一時的に上げる──。

「数値だけ」を信じると、嘘は簡単に通ってしまうのです。だからこそ、時刻・行動・金銭の動きと組み合わせて、“熱の理由”を立体で見る必要があります。

🧩 私の39.0℃──対峙の夜と、平熱への帰還

封筒をテーブルに置いた夜、夫の顔は一瞬で色を変えた。私は震える声で言った。

「あなたの平熱は36度。でも、私の心はずっと39度だった。……誰と、どこに行っていたの？」

夫は沈黙した。嘘は、核心に触れるほど、言葉を失う。

長い沈黙のあと、彼は小さく「ごめん」と言った。知らない人の謝罪みたいだった。

その夜の私は、泣かなかった。代わりに、ゆっくり息を吐いた。熱は、やっと下がっていく。