「愛を導いたはずのカーナビが、裏切りの証拠を指し示すことになった──」
“カーナビの履歴は恋の道案内”──不倫人の別れの道しるべとも知らず
その日、夫の車を借りたのは偶然だった。
「今日は電車が混んでるから、車で行けば？」と軽く言われ、私は彼のカギを受け取った。
何の疑いもなく運転席に座り、エンジンをかけたとき、カーナビの画面に目が止まった。
そこに並んでいた履歴──それは、私の知らない場所ばかりだったのだ。
「どうしてこんな場所に？」
そう思いながらスクロールしていくと、同じホテルやレストランの名前が繰り返し表示されていた。
会社や取引先の住所が並ぶはずのカーナビに、知らない“恋の目的地”が刻まれていたのだ。
◆◇◆
車が語り始めた裏切りの物語
夫は普段から車を大事にする人で、週末には必ず洗車をしていた。
その姿に「几帳面で頼りがいがある」と思っていたけれど、車は彼のもう一つの顔も隠していた。
カーナビは忠実に、彼の行動を記録していたのだ。
デジタル機器は嘘をつかない。
履歴に残された目的地の一つ一つが、まるで夫の裏切りを暴く証言者のように見えた。
✦✧✦
笑顔で出かけた休日の行き先
「今日は休日出勤なんだ」と言って出かけた日もあった。
そのときの彼の表情を思い返すと、確かにどこかぎこちなかった。
けれど、私は信じたかったのだ。
夫の言葉を疑うことなんて、これまで一度もなかったから。
だが、カーナビの履歴には、その“休日出勤”の日に入力されたホテルの名前が残っていた。
「休日出勤」ではなく、「休日不倫」。
真実を突きつけられた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
━━…
車内に残る香り
運転をしていると、助手席からふわりと甘い香りが漂ってきた。
それは私の知っている香水ではない。
窓を開けても消えないその香りは、確かに“彼女”の存在を示していた。
助手席の足元に落ちていた髪の毛一本すら、私には証拠のように思えた。
車は、夫と彼女の密会を黙って見守ってきたのだろう。
そして今、その記憶を私に告げていた。
✦✧✦
カーナビが示す“別れの道しるべ”
履歴を一つひとつ確認するたびに、胸が締め付けられた。
「どうして？」「いつから？」と問いかけても、答えてくれるのは冷たい画面だけ。
だが、その道案内は同時に、私にとって“別れの道しるべ”でもあった。
裏切りを知ってしまった以上、もう以前のように笑顔で夫を迎えることはできない。
この履歴を追えば、彼の不倫の全貌にたどり着ける──。
そう確信した瞬間、私は静かに心を決めた。
━━…
探偵に相談する決意
インターネットで調べると、探偵事務所には「カーナビ履歴調査」というメニューまであることを知った。
「車の移動記録は、不倫調査の強力な手がかりになる」と説明されていた。
私は勇気を振り絞り、無料相談に電話をかけた。
優しい声で応対してくれた担当者はこう言った。
「カーナビは確かな証拠につながる可能性が高いです。
調査を進めれば、ホテルやレストランに出入りする決定的な写真を撮ることもできますよ」
その言葉に、胸の奥にあった重苦しい不安が少し和らいだ。
もう一人で苦しむ必要はない。証拠をつかめば、この“恋の道案内”を終わらせることができるのだ。
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