卵巣腫瘍

卵管と卵巣の病気・卵巣腫瘍・卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎とは?

 

腫瘍、膿瘍、嚢腫の違いとは?

 

腫瘍とは、腫れものとか、しこり、こぶという意味で、これには生命には危険がない良性腫瘍と、生命に危険を及ぼす悪性腫瘍(癌)があります。

 

女性に関係の深い子宮筋腫は筋肉組織から発生する腫瘍で、良性腫瘍の一種です。

 

腫瘍とまぎらわしい言葉に、膿瘍と嚢腫があります。どちらも皮虜の内部にいろいろな変化が起きた結果、袋のようなものができてふくれたものです。その中身が膿であれば、膿瘍水のような液体であれば嚢腫と呼びます。

 

☆卵巣腫瘍・・・小さいうちはほとんど無症状

 

どんな病気なのでしょうか?

 

卵巣は、女性ホルモンを分泌するため、腫瘍ができやすい臓器です。できる腫瘍の種類は多く、性質は複雑ですが、嚢胞性腫瘍と充実性腫瘍の2種類に大別できます。

 

嚢胞性腫瘍・・・

 

嚢胞性腫瘍は、中が水様液で満たされ、さわるとブヨブヨしています。婦人科領域では、卵巣腫瘍は子宮筋腫と並んで頻度の高い病気です。75%は良性で、その大部分は嚢胞性腫瘍です。

 

したがって、一般に卵巣腫瘍という場合は、嚢胞性腫瘍を指します。若い人から高年の人まで広くみられますが、20~30歳代に多く、10歳代にもまれに発生します。

 

嚢胞性腫瘍ができる原因は、詳しく解明されていません。内容物により、漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、成熟性嚢胞奇形腫に分けられます。

 

 

①漿液性嚢胞腺腫・・・

 

嚢胞性腫瘍のなかで最も多く、大きさはこぶし大か、それより大きくなります。中にはさらつとした水様性の透明液が入っています。嚢胞腺腫は、一つのこともあれば、ぶどうの房状に複数できることもあります。ほとんどは良性ですが、悪性に変化する場合もあります。

 

 

②粘液性嚢胞腺腫・・・

 

 

大きさは親指の頭大から大人の頭大ですが、放置すると数㎏の巨大な腫瘍になる場合もあります。

 

中は、多房性といっていくつもの部屋に分かれており、ねばねばした粘液で満たされています。ほとんどは良性ですが、悪性に変化することもあります。

 

 

③成熟性嚢胞奇形腫・・・

 

 

成熟性嚢胞奇形腫の大きさは、鶏卵大から小児の頭大です。内容物は、ドロドロした皮脂分泌物の中に、毛髪、骨、歯などが入っています。

 

卵子のもとである胚細胞が変化したもので、胚細胞は人のからだをつくる源となる細胞であるため、こうしたものが中にできます。ほとんどが良性です。

 

 

充実性腫瘍・・・

 

卵巣腫瘍の1割ほどを占める充実性腫瘍は、かたいこぶのようになっています。良性型、中間型、悪性型の3タイプに分けられます。

 

嚢胞性腫瘍とは違って悪性の頻度がに高く、70~80%が卵巣がんなどの悪性腫瘍だといわれ、注意が必要です。

 

 

どんな症状が出るのでしょうか?

 

卵巣腫瘍はほとんどが無症状で、このことが悪性卵巣腫瘍の早期発見を遅らせる要因の一つであると考えられています。

 

また、卵巣が骨盤の奥深くにあるため、異常を発見しにくいという事情もあります。しかし最近では、超音波やCT、MRI、腫瘍マー力ーなど、検査技術が進歩したため、卵巣の異常を発見しやすくなり、以前に比べて悪性と良性の鑑別もつきやすくなっています。

 

卵巣そのものは、親指の頭くらいの大きさですが、腫瘍ができると徐々に大きくなります。腫瘍がにぎりこぶし大になるまでは、ほとんど症状がありません。

 

また、卵巣は左右に一対あるため、一方に腫瘍ができて機能を果たせなくなっても、もう一方が代役を果たし、月経異常も起こさずふつうに妊娠もします。

 

このため、腫瘍が小さいうちは、子宮がん検診や、妊娠の診察を受けた際に、偶然発見されることが少なくありません。

 

卵巣腫瘍の大きさは、腫瘍の種類によって異なり、個人差もあります。ときには数㎏の巨大な腫瘍になる場合もあり、大きくなってくるとさまざまな症状が出てきます。

 

腫瘍自体が痛むことはありません。主な症状は、腫瘍が大きく発育することによる腹部の膨満感や圧迫感からくるもので、次のようなものかあげられます。

 

①腹部膨満・・・

 

妊娠後期の妊婦くらいに大きくなる場合もあります。また、横になってわき腹にふれると、卵巣のしこりがわかることがあります。

 

②下腹部痛、腰痛、便秘・・・

 

大きくなった腫瘍が骨盤内の血管や神経、直腸、膀胱、尿管などを圧迫し、ときには癒着するため、下腹部痛、腰痛、排尿障害などを起こす場合があります。

 

③やせる・・・

 

巨大腫瘍は体内の栄養のほとんどを奪ってしまうため、全身の栄養状態が悪くなり、おなかばかりが大きくなつていき、全身はやせてくる場合があります。

 

④茎捻転・・・

 

茎捻転を起こすことがあります。これは、何らかの原因で卵巣が根本からねじれてしまうものです。妊娠中には、子宮が大きくなって卵巣を動かすため、特によく起こります。

 

急に強くねじれると、下腹部の激痛、吐き気、嘔吐などの急性症状が起こります。症状が激しいとショック状態に陥ることもあります。

 

また、ねじれた側に圧痛が起こる場合があります。徐々にねじれた場合は、ねじれが軽ければほとんど症状はありませんが、ねじれが強くなるにしたがって、下腹部に激痛が起こります。

 

ねじれによって出血したり、卵巣への血行がストップし、ねじれた先の部分が腐ってしまうことがあるので、茎捻転を起こした場合は緊急手術が必要です。

どんな検査・治療が必要か?

 

 

良性か悪性かの診断・・・

 

ほとんどの卵巣腫瘍は良性ですが、悪性の場合や、良性から悪性へ変化する場合もありますので、正確な診断が必要です。

 

卵巣のしこりは、内診や触診、超音波検査で、かなり確実に診断することができます。また、腫場マーカーといって、血液の中の腫瘍に関係のある抗体を検査すると、さらに詳しい診断ができます。しかし、腫瘍を摘出してその組織を調べないと、良性か悪性かの確定診断が困難な場合もあります。

 

①経過の観察・・・

 

かなり小さい腫瘍で、検査によって良性と診断がつく場合は、手術をしないで様子をみます。

 

例えば、大きさ5センチ以下のものは、ときには自然に消えてしまうこともあるので、すぐには手術をしないで、3か月から半年ごとの定期検診により経過を観察します。経過観察によって、さらに大きくなるような傾向があれば手術します。

 

②摘出手術・・・

 

 

腫瘍が小さくても、悪性が少しでも疑われるときや、5センチよりも大きな場合は手術をします。

 

放置すれば大きくなる一方で、茎捻転を起こしたり、さまざまな症状が現れ、ときに悪性に変化する可能性もあるので、腫瘍を摘出します。癒着がなければ、手術は難しくありません。

 

手術は、年齢や出産の希望の有無によって、腫瘍の部分だけを摘出するか、腫瘍がある側の卵巣をすベて摘出するかを決定します。卵巣すべてを摘出する場合でも、もう一方の健全な卵巣は残します。

 

卵巣を残すと腫瘍の再発が考えられますが、若い人の場合は出産との関係もあるので、できるだけ卵巣を残す方針がとられます。

 

閉経に近い場合は、検査の結果や経過などをみて、手術するかどうかを決めますが、たいていは卵巣をとりません。また、閉経後でも、卵巣を摘出するのは、腫瘍が腫大傾向にある場合です。

 

☆卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎・・・卵管炎は腹膜まで広がりやすい

 

どんな病気なのでしょうか?

 

卵管、卵巣が細菌の感染によって炎症を起こした状態を、それぞれ卵管炎、卵巣炎といいます。

 

膣から入り込んだ細菌が、子宮頸管、卵管へとのぼって卵管に炎症を起こし卵巣にも炎症が広がるのです。卵管が炎症を起すと卵巣にも影響がおよび、卵管と卵巣の両方が発病することが多いため、あわせて子宮付属器炎ということもあります。

 

卵巣は炎症に強い性質があり、卵巣炎が単独で発生することは非常にまれにしかありません。また、炎症が骨盤内の腹膜にまで広がった場合には、骨盤腹膜炎といいます。

 

卵管炎にかかった場合は、できるだけ早く正しい治療を行って、骨盤内まで炎症が広がらないようにすることが大切です。

 

多くの場合、上行感染によって、外陰や膣から子宮頸管、子宮内膜へ感染し、卵管から卵巣、骨盤腹膜にまで炎症が広がります。

 

上行感染のほかに、虫垂炎や腎盂腎炎などが、逆に下行感染することもあります。原因菌は、ほかの内性器の炎症と同じように、一般に連鎖球菌やブドウ球菌、クラミジアによる場合が多く、そのほか淋菌、肺炎菌、大腸菌、結核菌などによって炎症が起こる場合もあります。

 

これらの炎症の多くは流産や人工妊娠中絶、出産、不潔なセックスなどによって感染します。

 

 

どんな症状が出るのでしょうか?

 

 

①高熱と下腹部痛・・・

 

一般にはおりものが増え、発熱や下腹部痛を伴います。急性期には、40℃近い高熱や、かなり激しい下腹部痛や嘔吐があって、虫垂炎と間違えられることがあります。

 

また、不正出血がみられることもあります。しかし、症状は原因菌の種類によって多少異なります。クラミジアが原因の場合は、腹痛はあまり激しくなく、おりものにも大きな変化はみられません。

 

これに対して淋菌が原因の場合には、激しい腹痛と黄緑色のおりものが特徴です。

 

②慢性化すると不妊の原因になる・・・

 

急性のものは、慢性炎症に以降しないよう、できるだけ早く完全に炎症を治すことです。慢性化すると、卵管が周囲の臓器や組織と癒着を起こします。

 

それによって精子や卵子の通過障害が起こり、不妊の原因となります。ときには、水や膿がたまって、卵管溜膿腫や卵管溜水腫ができることもあります。そうなると、発作的に強い痛みにおそわれます。

 

 

どんな治療が必要か?

 

子宮頸管からの分泌物を採取して培養したり、血液検査をして診断を下します。検査で原因菌が特定されたら、それにあわせた抗生物質を服用して治療します。

 

卵管溜水腫や卵管溜膿腫になってしまったり、膿がたまってしまった場合は、外科手術が必要になることがあります。炎症が残っているうちは、医師の指示に従い、完全に治すことが大切です。

 

骨盤腹膜炎まで進むと、治っても強い癒着を生じることがあります。子宮癒着による位置異常のほか、腸管癒着から、下腹の不快感、鈍痛、腰痛、セックス時の不快感、不妊などの症状が起こる場合があります。後遺症が起こった場合には理学療法を行ったり手術が必要になったりすることもあります。

 

 

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